資本論を読むことになってしまった

分からないことだらけの、この何ともいえないモヤモヤ感は・・・。

ベーム・バヴェルクの件(1)

ベーム・バヴェルク(Böhm-Bawerk)という人がいる。オーストリアの経済学者で、マルクス批判の古典になっている『マルクス体系の終焉(Zum Abschluß des Marxschen Systems 1896)』の著者である。出版から100年以上たっても、日本国内の論文での引用は絶えない。2014年に発表された論文にベーム・バヴェルクが引用されてマルクス批判の論点として使われていた。出版されてずいぶん経つので、批判も多く、最近では(といっても結構前になるが)駒澤大学の大石雄爾先生が2001年と2007年に批判論文を発表されている。特に2007年の論文は論点がはっきりしているし、批判手続きもしっかりしている。読むべき論文の一つだと思う。

研究者ではない人がベーム・バヴェルクを引用している場合もある。大学リポジトリを巡る過程で日経BPのページを発見。「まんが学術文庫」の『資本論』の話をしている。そこで等価交換について、「マンガ版ではパン屋と八百屋が売れ残ったパンと野菜を交換し、その交換が成り立つのは互いの商品が同等の価値を持つからだと解説されます。何となく納得してしまうかもしれません。しかし人が物を交換するのは、相手の物が自分の物と同じ価値を持つからではありません。」みたいなことが書いてある。

ん? なんだ、これ。「同じ価値を持つから交換する」って資本論のどこに書いてたっけ? しかも「人が物を交換するのは、相手の物が自分の物と同じ価値を持つからではありません」は、学術論文でもよく見かける批判論点。これほど皆が用いる論点ということはその起源があるはずだ。でも、これは学術的な論文ではないのだから、まあ、いいか。いずれにしても、ベーム・バヴェルクは専門家から一般の人まで引用価値のある人なのだと思う。

読まざるを得ないのだろうか・・・。探してみると、ハーバード大学にPDFを発見。・・・やっぱり読むしかないのだろう。

読むといっても、全部読んでいると資本論の方を読む時間が無くなりそうなので、「I. Die Theorie vom Wert und vom Mehrwert(第1章 価値学説と剰余価値学説)」だけ読んでみることにした。(なお、『体系の終焉』の注によると、資本論1巻に関してはⅡ版を使うと書いているので、Ⅱ版の読み取りをおこなう。)