資本論を読むことになってしまった

分からないことだらけの、この何ともいえないモヤモヤ感は・・・。

(32)Ⅰ版本文 パラグラフ9-3 Ⅱ版とフランス語版の対応箇所を確認する(2) 内容

Ⅱ版とフランス語版は内容的にほぼ同一である。内容をまとめると、

①「この共通のもの」は自然的特性(自然的属性)ではなく、この物体的特性(自然的性質)は使用価値において考慮される。

②使用価値は交換関係において捨象される。

③使用価値はある一定の割合でほかの使用価値と同じである。

これに対して、初版では

①「交換価値の実体」は商品の「物理的」な定在とは異なる独立したものであり、それは交換関係から分かる。

②交換関係は使用価値の捨象によって特徴づけられる。

③交換価値という側面からいえば、商品がある割合で存在すれば、他の商品と同じである。

Ⅱ版・フランス語版と初版の根本的な違いは、最初の「共通のもの」と「交換価値の実体」というところである。

Ⅱ版・フランス語版では「共通のもの」は文脈上「交換価値」であろう。初版の「交換価値の実体」が何を意味しているのかは問題となるだろう。

すでに述べたようにパラグラフ⑤の叙述との関係から、整合的に理解するには「交換価値の実体」を「交換価値という実体」のように同格的に読むのが良いのだろが、解釈として可能かどうか議論のあるところだろう。

 

井上・崎山論文の解釈について

両氏は、初版パラグラフ9の3文目③Dem Tauschwerth nach betrachtet ist nämlich eine Waare grade so gut als jede andre, wenn sie nur in richtiger Proportion vorhanden ist.における ‘sie’が段落最初のdie Substanz des Tauschwerthsを指し、Ⅱ版における対応箇所Innerhalb desselben gilt ein Gebrauchswerth grade so viel wie jeder andre, wenn er nur in gehöriger Proportion vorhanden ist.における’er’が段落最初のDiess Gemeinsameを指すという解釈をされている(商品語の〈場〉は人間語の世界とどのように異なっているか(2) 井上康・崎山政毅 立命館文学633号2013 PP.114-115)が、’sie’は直前のeine Waare、’er’も同様に直前のein Gebrauchswerthを指しているとするのが、文法的に素直に読むことになるような気がするのだがどうだろうか。