資本論を読むことになってしまった

分からないことだらけの、この何ともいえないモヤモヤ感は・・・。

ベーム・バヴェルクの件(3)

最初の部分について。

Er(=Marx 引用者) beginnt mit der „Analyse der Ware“ (I. 9). Die Ware ist einerseits als nützliches Ding, das durch seine Eigenschaften menschliche Bedürfnisse irgend einer Art befriedigt, ein Gebrauchswerth, andererseits bildet sie die stofflichen Träger des Tauschwerts. Auf diesen letzteren geht die Analyse nunmehr über. „Der Tauschwerth erscheint zunächst als das quantitative Verhältnis, die Proportion, worin sich Gebrauchswerte einer Art gegen Gebrauchswerte anderer Art austauschen, ein Verhältnis, das beständig mit Zeit und Ort wechselt“. ➀ Es scheint also etwas Zufälliges zu sein. Dennoch muß es in diesem Wechsel etwas Bleibendes geben, dem Marx nachzuspüren unternimmt. Er tut es in seiner bekannten dialektischen Weise.

訳してみる。

マルクスは「商品の分析」から始める(1巻9ページ)。商品は、一方では、その特性によって人間の何らかの欲求を満たす有用な物として使用価値であり、他方では交換価値の素材的担い手をなしている。今や、分析はこの後者(交換価値)に移行する。

まず、交換価値は量的な関係として、すなわちある使用価値がそこにおいて他の使用価値と交換される比率として、時と場所によって絶えず変転する関係として現象する。」それ(量的関係)はなにか偶然的なものであるように見える。しかし、マルクスがそれを追求しようと企てている、ある持続的なものがこの変化の中に存在しなければならない。彼はそれ(この企て)をよく知られた弁証法的な方法で行うのである。

 

なぜ、①文に下線を付けたか。実はオレンジ文字の引用文には続きがあり、Der Tauschwerth scheint daher etwas Zufälliges und rein Relatives, ein der Waare innerlicher, immanenter Tauschwerth (valeur intrinsèque) also eine contradictio in adjecto .”となっている。訳すと、「したがって交換価値は、何か偶然的な物、純粋に相関的なものであるように見え、商品の内部にある、内在的な交換価値(固有の価値)は形容矛盾であるように見える。」となる。

➀線の主語「それ」はマルクスの本来の文章からすると「交換価値」を指しているのでerのはずなのに、ベーム・バヴェルクは指示語をesにしてほぼ同じ内容を書いていることになる。esにすると、ここでは「量的関係」を指さざるをえなくなり、関係の存在そのものが偶然的なものになるのである。しかも、dennoch(しかし)という接続詞が「なにか偶然的なものであるように見える」を強調するので、「~であるように見えるけど、そではないよ」というsheinen(~のように見える)のもっているニュアンスが打ち消されてしまうのだ。これによって「マルクスが追求しようと企てている、ある持続的なもの」の「持続的なもの」との対比が強調され、「よく知られた弁証法的な方法」を使わないとマルクスの議論は成立しないよ、という話のながれになるのだ。

おそらく、当時の経済学の世界では弁証法的な方法」は夏祭りの夜店で買ったアルマーニと同じくらいうさん臭いものだったはずだ。

ドイツ語を日常語として使用していたはずのオーストリア人、ベーム・バヴェルクがこの指示語を書き間違えるはずはなく、意図的に書き換えたのだと思う。

学生がテキストを変更して似たような内容を変更して自分の考えに近いように記述したら、指導教官からお説教くらうのではないだろうか。そういうレベルの話だと思うのだが・・・。

こういう引用の仕方が当時は一般的だったのだろうか・・・。でも、やっぱり、ちょっとねえ・・・。