Ⅰ版序文 パラグラフ4
①Die Werthform, deren fertige Gestalt die Geldform,
ist sehr inhaltslos und einfach. ②Dennoch hat der Menschengeist
sie seit mehr als 2000 Jahren vergeblich zu ergründen gesucht,
während andrerseits die Analyse viel inhaltsvollerer und kompli-
cirterer Formen wenigstens annähernd gelang. ③Warum? Weil
der ausgebildete Körper leichter zu studiren ist als die Körper-
zelle. ④Bei der Analyse der ökonomischen Formen kann ausser-
dem weder das Mikroskop dienen, noch chemische Reagentien.
⑤Die Abstraktionskraft muss beide ersetzen. ⑥Für die bürgerliche
Gesellschaft ist aber die Waarenform des Arbeitsprodukts oder
die Werthform der Waare die ökonomische Zellen-
form. ⑦Dem Ungebildeten scheint sich ihre Analyse in blossen
Spitzfindigkeiten herumzutreiben. ⑧Es handelt sich dabei
in der That um Spitzfindigkeiten, aber nur so wie es sich
in der mikrologischen Anatomie darum handelt.
①文について
「その完成形が貨幣形態である価値形態は、きわめて内容が欠如しており、単一である。」
ここでのinhaltslos und einfachは気になる。
向坂さんの訳(岩波文庫)では
きわめて内容にとぼしく、単純である
岡崎さんの訳(大月書店 マルクス・エンゲルス全集)では
非常に無内容で簡単である
となっているのですが、前のパラグラフで、「弁証法が非常に鋭く現われている」ので理解するのが難しい、みたいなこと書いているのだからお二人のような、特に岡崎さんのような訳になるはずがない。これでは、「価値形態論を理解するのは楽勝です」みたいになってしまう。
inhaltslos und einfachの解釈については、マルクスも悪いと思う。次の文のせいなのだ。次の文はこの2語を受けて
②文について
「が、人間精神は2000年以上もそれを究明しようとして徒労に終わっている。他方では内容が多く複雑な形態の分析は少なくとも近いところまで達したにもかかわらずそうなのである。」
dennochがなければスッキリするのに。ここらの論述の流れは、inhaltslos und einfachであるからこそ解明が大変なのです、というものですから。
そもそも、価値形態論に「弁証法が非常に鋭く現われている」であれば、このinhaltslos und einfachも弁証法との関連で、というよりもヘーゲルとの関連で確認した方がいいのかもしれない。
確か『論理学』のSein論のSein – Nichts – Werdenのところでinhaltslosという語は出ていたような気がする。(また確認事項が増えた!)
③文について
「なぜか? できあがった体を研究することは、体の細胞を研究するより簡単だからだ。」
比喩としては単純なものだが、これで当時の読者は納得したのだろうか。
④文について
「それに加えて、経済的な分析のもとでは、顕微鏡も化学的な試薬も役に立たないからである。」
特に問題なし。
⑤文について
「抽象力がこの両者(顕微鏡と試薬)の代わりをしなければならいのである。」
「抽象力」が本文でどのように必要になるのか、も覚えておこう。
⑥文について
「しかし、ブルジョア社会にとって、労働生産物の商品形態、あるいは商品の価値形態は経済における細胞なのである。」
「労働生産物の商品形態」と「商品の価値形態」違いってあるのか? ただ第1章商品が難しいよと言っているのか?
本文で確認しなければ。
⑦文について
「教養のないもの(素養のないもの…向坂訳)にとっては、その分析はあれやこれやと細かいことにわたっているように思えるだろう。」
特に問題なし。
⑧文について
「そこでは実際細かいことが問題になっているのだが、しかし顕微鏡的な解剖において小さなことが問題となるのと同様なのである。」
特に問題なし。