資本論を読むことになってしまった

分からないことだらけの、この何ともいえないモヤモヤ感は・・・。

(18)Ⅰ版本文 パラグラフ3

Ⅰ版本文 パラグラフ3

①Jedes nützliche Ding, wie Eisen, Papier u. s. w., ist unter doppeltem

Gesichtspunkt zu betrachten, nach Qualität und Quantität. ②Jedes

solche Ding ist ein Ganzes vieler Eigenschaften und kann daher nach ver-

schiedenen Seiten nützlich sein. ③Diese verschiedenen Seiten und daher

die mannigfachen Gebrauchsweisen der Dinge zu entdecken, ist geschicht-

liche That3). ④So ist die Findung gesellschaftlicher Masse für die Quan-

tität der nützlichen Dinge. ⑤Die Verschiedenheit der Waarenmasse ent-

springt theils aus der verschiedenen Natur der zu messenden Gegenstände,

theils aus Convention.

 

①文について

「たとえば、鉄や紙などのような各々の有用な物は二重の観点のもとで、つまり、質と量から考察されなければならない。」

「有用な物」は前パラグラフからの話だと、パラグラフ2の①文

Die Waare ist zunächst ein äusserer Gegenstand, ein Ding, das durch

seine Eigenschaften menschliche Bedürfnisse irgend einer Art befriedigt.

の赤文字部分。「人間の欲求を何らかの仕方で満たす特性をもつもの」ということだろう。

ちなみに、カール・カウツキーによる資本論民衆版は、パラグラフ4を以下のように始めている。

Die Nützlichkeit eines Dinges, seine Eigenschaft, menschliche Bedürfnisse

irgendeiner Art zu befriedigen, macht es zum Gebrauchswerth.

マルクスの本文を書きかえてしまうところは正しくないことだが、「有用であること」の内容に関しては正しいと思う。

 

「二重の観点のもとで、つまり、質と量から考察されなければならない。」の、質と量の二側面からというのはわかる。その二面は哲学的には普通の発想。ヘーゲルの大論理学も第1巻の第1篇は質(Qualität)、第2篇は量(Quantität)ってなってますし・・・意識しているのだろうか。調べるのが大変そう。

このことはおいておくにしても、「質と量」の二つの側面は、この後ずっと続く重要な視点だと思う。すぐに出てくる「使用価値」に関してもこの二側面からとらえる記述になっている。

 

②文について

「そのような「もの」のどれも多くの諸特性の全体であって、したがってさまざまな側面から有用でありうる。」

ものが諸特性の全体であるなら、パラグラフ2の展開からも、この文は自然なながれである。

ものが「人間の欲求を何らかの仕方で満たす特性」の全体なら、ものはその特性に応じて有用でありうる、ということでしょう。

 

③文、④文まとめて

③文

「もののこの様々な側面、また従って多様な使用方法を見出すことは歴史的な行為である。」

④文

「有用なものの量に対する社会的な尺度を見出すこともそうである。」

 

③文の「多様な使用方法を見出す」とはその有用性を見出すということだろう。そして有用性は「人間の欲求を何らかの仕方で満たす特性」であり、それが人間の欲求である限り、欲求の種類は絶対的に固定されたものではなく、そのときどきで変化するはずである。したがって、有用性を見出す行為は歴史的(生活史としての)行為であるはずだ。

また、④文の「有用なものの量に対する社会的な尺度」の「社会的な尺度」はそれが「社会的」であるのだから、その「社会の在り方」に左右されるはずである。

ふたつの文とも、パラグラフ4、5内容の布石として存在しているのだろう。

 

⑤文について

「商品尺度の差異は、一方では量られるべき対象の様々な性質から、他方では慣習から発するのである。」

これが、②と③・④の結論となる。ここでの「一方では量られるべき対象の様々な性質から」がパラグラフ②に対応し、「他方では慣習から」がパラグラフ③・④に対応することになる。

有用なものを成り立たせるものの諸特性から、ものはその諸特性に応じて有用性を示す、ということだけではなく、③④⑤パラグラフにおいて、歴史的・社会的に決まる場合を付け加えているわけだ。

 

とすると、全体をとおして、有用性の質的規定、量的規定がともに、歴史的・社会的であるということになる。そしてこれがパラグラフ5の議論を可能にする布石のひとつといえると思う。